こんにちは!おくりびとインターン 兼 次世代死生観研究所(仮)研究員の、ひなたと申します。普段は大学院生をしています。
今まで死生観についてさまざまな観点から記事を書いてきましたが、
今回は少し角度を変えて「死」にまつわるもっとも身近な儀式である「お葬式」、なかでも「納棺」について書いていこうと思います。
そもそも納棺って何……?と馴染みのない方もいると思うので、丁寧に説明していきますね。
棺に納める儀式「納棺の儀」
納棺とは文字通り、お葬式の前に亡くなった人を棺に納めることです。
お葬式に参列すると、棺に入った故人様とお別れをすることができますよね。
実は故人を棺に納める一連の流れは、単に納棺するだけでなく、家族も参加できる儀式として行うことがあるのです。
この儀式は納棺の儀と呼ばれ、故人があの世へ無事に旅立つ身支度を整えてあげる大切な儀式であり、故人を弔う最初の儀式でもあるのです。
納棺の儀は重要な儀式として昔から行われており、その過程や使う道具にはひとつひとつに意味が込められています。
①末期(まつご)の水…口元を水で潤す
②湯灌(ゆかん)…身体を洗い清める
③お着せ替え・死化粧…死装束へ着せ替える
④納棺
これが納棺の儀の基本的な流れです。
例えば②湯灌 は、単に清潔にするというだけではなく、故人様の生前の痛みや苦しみを洗い流すという意味が込められています。
納棺の儀が持つ意味
どうして私たちは伝統的に納棺の儀を行ってきたのでしょうか。
納棺の儀はおくられる人のためでもあり、おくる人のためでもあるというのが私の考えです。
納棺の儀の意味としてまず思い浮かぶのは「おくられる人のため」ではないでしょうか。
先程紹介した②湯灌 だけでなく③お着せ替え・死化粧 も、故人が安心してあの世へ旅立てるようにという意味を込めて行われています。
しかし、納棺の儀の意味はそれだけではないと私は考えています。
おくる人のため
家族は納棺の儀式を通し、大切な人が亡くなったという事実にゆっくりと向き合うことで、死を受け入れ、悲しみを落ち着けることができます。
さらに、大切な人の身体を丁寧に清めて身支度をしてあげることで、「最後まできちんと向き合うことができた」と思うことができます。
生前にどれだけ誠実に接してきたとしても、大切な人の死には後悔が伴うものです。
儀式という手順を踏むことで家族は心を落ち着け、悲しみから立ち直るきっかけを得ることができるのだと考えています。
納棺の儀がこのような意味を持つ儀式であることの裏付けとして、近年の儀式スタイルの変化があります。
例えば③お着せ替え・化粧 では、(仏式の場合)死装束を着せるのが本来のしきたりです。
しかし近年では、「その人らしい姿で見送りたい」という思いのもと、生前故人が好きだった洋服や、仕事で着ていたスーツなどを着せてあげるケースが増えているそうです。
私が祖母の納棺の儀に参列したときのことです。
祖母はとてもおしゃれな人で、いくつになっても毎日しっかりお化粧をしていました。そのため納棺師の方が最初に死化粧をしてくださったとき、少し化粧が薄いかな?と感じました。そこで家族と相談してお願いし、しっかりと眉を書いてもらったら、私たちの思い描くおばあちゃんになった…ということがありました。
祖母もお化粧をしっかりしていなかったら落ち着かなかったと思いますし、私たち家族も祖母らしい姿でおくり出すことができて、なんだか安心したことを覚えています。
このように形式に囚われすぎることなく、一人ひとりに合わせた柔軟なスタイルで行われるようになってきているのは、まさしく納棺の儀がおくられる人のためでもあり、おくる人のためでもあるからでしょう。
おわりに
今回納棺の儀について改めて調べ考えてみて、おくられる人のためでもおくる人のためでもある納棺の儀は、
“死んだら終わり”ではない、それぞれの死生観を大切にしているからこそ行われてきた儀式といえるのではないかと感じました。
私は祖父と祖母の納棺の儀に参加したことがありますが、おじいちゃんとおばあちゃんにゆっくりと向き合うあの時間があったからこそ二人を穏やかにおくり出してあげられたな、と思っています。
納棺の儀や葬儀が決して形だけのものではないことを、皆さんにも知っていただけたら嬉しいです。
次世代死生観研究所(仮)研究員 ひなた
*余談ですが……納棺の儀の意味の1つでもある「おくる人のため」のケアは「グリーフケア」と呼ばれています。グリーフケアについてはまた記事にしたいと考えているので、ぜひまた研究所を覗きに来てくださいね!